午後2時30分より4時まで、データベース執筆メンバーによりデータベース公開に向けた内容の最終調整が行われた。いくつかの修正点が議論され、データベースの執筆者およびプログラム作成者が必要な作業を行うこととなった。
 
 午後4時より一般に公開された研究会となり、モロッコより来日中のアシーア・ベンサラーム・アラウィー無任所大使を講師に迎え、「モロッコの民主主義」をテーマに報告と議論が行われた。ベンサラーハ大使は、ムハンマド5世大学の法・経済・社会科学部で国際法の教授および戦略研究センター研究部長を務めた経験を持つことから、近年のモロッコで実施されている種々の政治改革を通して、その背景である社会レベルの変化を解説した。女性や教育、労働などの各分野での改革や変化が政治的社会的な自由化につながっている状況を論じ、過去における国王を頂
点としたトップダウンの体制から、現在はダイアローグを基調としたボトムアップの体制にモロッコは移行しつつあると評価した。その一方で、人権問題に関わるモロッコへの批判にも言及し、またイスラームに関わる価値観や慣習が種々の改革とぶつかり合う現状も指摘するなど、その内容はバランスのとれたものであった。
 民主化に関しては、「狭義の民主化」と「広義の民主化」という議論の立て方がある。競技のものは法律や制度の改革による政治レベルにおける直接的な変化であり、広義のものは教育や経済などの発展による社会レベルにおける一般的に民主主義の理解や受容・定着を意味している。上記報告は、モロッコにおける「広義の民主化」に関わるものであったといえる。モロッコは王制アラブ8カ国のなかで、国王が下院総選挙結果第一党の党首を首相に任命している唯一の国であり、民主化や自由化に関わる制度と運用の関係が他の国々よりも積極的に展開されている。
 その背景にあたる部分が、今回の研究会において紹介・議論され、非常に有意義な内容であったと思う。

17回目: 「中東民主班」第2回研究会
日時: 2007年3月24日(土) 14:30〜18:00
場所: 東京大学東洋文化研究所会議室
内容: データベース執筆者の打ち合わせ
   講演
講演者・講演題目:  アシーヤ・ベンサラーム(モロッコ王国無任所大使)
          「モロッコにおける民主主義について」